インタビュー:麻生久美子「大人から見れば、嫌な子供だったと思います」

livedoor 2008年09月26日15時17分

 小学5年生、11歳が妊娠・出産するという衝撃的なテーマで、公開前から大きな注目を集める映画「コドモのコドモ」。昨年、松山ケンイチ・成海璃子主演でヒットを記録した「神童」を手掛けた萩生田宏治監督が、子供達の成長をみずみずしく描いている。また、理想を掲げて父兄と校長に臨みながらも、子供達に思うように受け入れられず、戸惑いながらも自分を見つめなおしていくという女性教師・八木先生役を好演したのが、「たみおのしあわせ」、「純喫茶磯辺」など今年7本の作品に出演し、日本を代表する映画女優、麻生久美子だ。お互いに「一緒に仕事をしてみたかった」と話す二人に、作品、自らの演技観・作品観について話を聞いた。

――まず、麻生さんがこの作品に出演を決めた理由、萩生田監督が麻生さんを起用した理由を教えてもらえますか?
麻生久美子(以降、麻生):私にとっては、すごく真っ直ぐで、不器用で、空回りする、八木先生というキャラクターがすごく魅力的で。あまりやったことのない役だったので、この役柄を演じることができれば、自分にとってすごくプラスになるんじゃないかな?という予感がしたのと、監督ともお仕事がしてみたかったので。

萩生田監督(以降、萩生田):恐縮です!

麻生:イヤイヤ、本当に(笑)。

萩生田:麻生さんを一番初めに観たのはもうずっと前で、「カンゾー先生」(1998年公開)だったんですけど、その時にかなり衝撃的な印象を受けまして。“しなやかに正しい”感じがする女優さんだな、是非一度お仕事させて頂きたいなと思っていました。八木先生というのはとても難しい役だと思っていて。原作では彼氏がいたり、八木先生の日常の部分でかなりキャラクターが描かれていたんですけど、映画の中ではそういう所を全部落としていたので。限られた場面の中で、複雑な八木先生を演じるのはかなり難しいだろうなと思ったので、「麻生さんなら!」とお願いしました。

――監督は、原作のどこに惹かれて映画にしたいと思いましたか?
萩生田:さそうさんの原作はもっと前に出ていたんですけど、プロデューサーの根岸さんから「こういう原作があるんだけど、どう思う?」と言われて初めて、“映画化できるかどうか?”という前提で読ませて頂きました。それで、出産シーンの部分に非常に感動して、子ども達だけで出産するというのは、あり得ないと言えばあり得ないんだろうけど、あまり一言で「あり得ない!」と言い切れないことだなと思って、チャレンジしてみようと取り組ませてもらいました。

――原作を読んだ時に、「子供が妊娠する」ということに関してどのように思いましたか?
麻生:私は、その時は何も思わなかったですね。さそうさんがすごく好きなお友達がいて、全部貸してもらっていたのでもう読んで知っていたというのもありましたけど。

萩生田:「こんな作品に出て」というリスクよりは、麻生さんが覚悟を持って入ってこられて八木先生をやっているという感じがしていて。もちろん、それに対する疑問とか、「出たらどうなんだろう?」「こう言ったら色々と言われるんだろうか?」というのはスタッフもキャストもあると思うんですけど。そこで麻生さんみたいにドンっと立って頂くと、その覚悟からこっちも励まされてやった感じはありましたね。



――麻生さんは八木先生役を演じてみての感想と、自分にとってどんなことがプラスになったか教えてもらえますか?
麻生:すごく難しかったです!監督に何回も「八木先生難しいです!」と言っていたぐらい、やりながらもずっと難しさを感じていて。でも、“教育”という意味では八木先生もきっと難しさを感じながら、彼女は彼女で毎日すごく闘っていたと思うんです。映画が全部終わった後に思ったことだと、監督とお仕事ができたことがすごくプラスになっていて。私が思うになんですけど、監督はすごく作り込まれた芝居より、ちょっと生々しいというかリアルっぽい部分が好きなんだろうと。そういう芝居って、意識してできるものではないと思うんですけど、その発見が自分にとってはすごくプラスになったんですよ。表現するのは難しいんですけど。

萩生田:「セリフが間違ってもNGにしないんですね」と言われたことは覚えています(笑)。

麻生:そう!あまり日常の会話で、きっちり話すことって無いじゃないですか。割と長い間やってはいるので、そういうことに気付いても良さそうなんですけど、今回お仕事して初めて気付いたんですよね。映画の中で台詞を言うことに関して、今まではきっちり話すことの方が当たり前だと思ってやっていたんですね。そうじゃない良さがあることに気付けたという発見は、ものすごく自分にプラスでした。

――監督は、どういうアドバイスをしたんですか?
萩生田:特に無いというか(笑)、アドバイスするのが仕事でもなくて。大概カメラの向こうに立てば、「どう撮られるか」という意識になっていくと思うんですけど、僕から見ていると麻生さんの場足は意外とそうではなくて。今この場所に立って、カメラのこっち側と一緒にどういう風に作っていくかな?という覚悟を持った女優さんだな、と思ってずっと見ていたというのが正直な感想ですね。

――麻生さんは、撮影現場で子役達とどのように接したんですか?
麻生:まず、私からは仲良くなろうと話し掛けたことは無いです(笑)。八木先生自体が、自分の中ではすごく近付いているつもりなんですけど、すごく子供と距離がある先生だったので。自分からそんなに積極的に仲良くならなくていいかなというか、むしろその方が最初はいいかなと。敢えてそうしていたつもりはないんですけど、無理矢理仲良くなる必要もないかなって、ちょっと距離を置いていましたね。だけど子供達が話し掛けてくるので(笑)、自然にどんどん仲良くなっていって。もう冬バージョンでは、仕事が終わった後に「八木セン!今日ゲームやるから、うちの部屋に来て」と言われて、部屋に行ってまでゲームをして、子供たちと遊んで。

萩生田:そうだったんですか!?

麻生:女子チームの部屋に呼ばれて「やわらかあたま塾」とかで対戦させられて、ほとんど負けるんですよ。子どもの脳みそはすごいんですよ(笑)。

――子どもに対する考え方など、この映画を通して変化したことはありますか?
麻生:そんなにすごく変わったとことは無いですけど、子どもって一人一人が持っているパワーがすごいんですよ。それが怖くもあり、勇気づけられもしたんですけど。先生として前に立つと、子ども達の視線が一気にくるので、すごく緊張するんですよ。それが意外と強烈なので、もちろん元気をもらったりもするんですけど、すごく疲れたりもするし。あの感じを味わえたのがすごく良かったです。



――お二人は小学校の頃、どのような男の子と女の子でしたか?
麻生:うわあ~。

萩生田:麻生さん、すごそう(笑)。

麻生:私は性格悪かったです、本当に(笑)。多分、自意識過剰すぎたんだと思います。だから、大人から見れば嫌な子供だったと思います。

――登場する子ども達の中で、一番近いキャラクターは誰ですか?
麻生:でも、割と優等生でもあったので、美香が一番近いですかね。

萩生田:なるほど。僕は結構、内気でしたね。…今も内気なんですけど(笑)。あまり表に出ない感じで。

麻生:じゃあ、私と真逆じゃないですか。もう、すごく目立ちたがり屋で大変でしたよ(笑)。

――麻生さんと監督が、一番印象に残っているシーンはどこですか?
萩生田:特にこれが秀でているというより、僕は全体の体験として残っている感じがするんですね。

麻生:難しいですねー。もちろん「どこをとっても」というのはあるんですけど。私はほとんどが教室のシーンだったので、意外かもしれないんですけどラストシーンが。八木センが成長したという意味もあるんですけど、ちょっとキャラクターが変わりすぎたんじゃないか?という自分への反省も込めて。違う意味で印象に残っていますね(笑)。

――出来上がった映画を見ての感想はいかがですか?
麻生:小学生が出産するという題材もあって、私自身もあまり信じられないというか、役柄的にもそうなので、それでいいのかもしれませんが、八木先生も信じられない想いで終わってはいるんですよ。その教室でのシーンが自分的に納得いかず、すごく大変だったんですけど。綺麗な話としてすぐに受け入れるだけではない形で終わったのが、ある意味良かったんだなと今では思っています。

萩生田:そうですね。最初にラッシュで繋げて、2時間半ぐらいになるんですけど、もう見ているだけでヘトヘトになる感じでしたね(笑)。客観的に編集をどうしようかチェックするんですけど、もうそれ所じゃない感じがしましたね。気付いたらもうボロボロ泣いている感じでした。自分のやれる範囲を超えた感じがかなりありましたね。ちょっと観て頂いて、という感じなんですけど。最後までイッパイイッパイでした。

麻生:私もです(笑)。

――麻生さんが思う、この映画の魅力を教えてください。
麻生:監督を前に言いづらいんですけど(笑)、子ども達がすごく魅力的で、子どもの世界がちゃんと描かれていると思うんですよ。自分が子どもの時に経験したような女子同士の仲間外れだったりって心が痛むんですけど、それをリアルに描いてる所が私はすごく好きでしたし。それでいて、子ども達の団結力とかが気持ちよく描かれているので。そして、春菜とお母さんの関係や家族のお話も温かくて好きです。

――監督には難しい質問を。麻生久美子さんの魅力を一言で伺いたいのですが。
麻生:おっと!すごく難しいことを聞きますねぇ(笑)。

萩生田:何か“正しい”感じがしているんですけどね。別に頑なに「これが正しい!」というわけじゃなくて。逆に言えば、「間違ったことが嫌い」という意識をしなやかに持たれているなと。何かぶつかった時に、もちろん対処しきれないものもあるじゃないですか?その時に「どうするのか面白そうだな」みたいな(笑)。それが僕としては魅力なんですね。

麻生:あー、「間違ったことが嫌い」というのは合ってます(笑)。

萩生田:「カンゾー先生」とか、それがすごく伝わってくる感じが。

――最初に麻生さんを見た時からということですね。
萩生田:そうですね。だから今も変わらない…あまり女優さんに「変わらない」と言ってはいけないのかもしれないけど(笑)。根本の所は変わられていないなと、現場を一緒にやらせてもらってすごく思いました。

――「純喫茶磯辺」でも素子という、ちょっと変わったキャラクターを演じていて、今回の八木先生もクセのある先生だと思っていまして。この所、個性的な役柄が続いているように見えるのですが。
麻生:「純喫茶磯辺」と「たみおのしあわせ」は、自分の中では共通したものというか変わった役、普通じゃない所が二つにはあるんですけど、八木先生は自分では割と真っ当というか、すごく一生懸命な役なんですよ。マジメな感じでやっているので、変わっているという意識が自分には無いんですね。まぁ、他の役も一生懸命なキャラクターではあるんですけど。



――色々なキャラクターを演じることが多いと思うのですが、どのように演じ分けたり、役に入っていくのですか?
麻生:結構、役のことを考えている時間がクランクインする前にあるので、そこからだんだんと…。もちろん現場でもそうなんですけど、その期間中に作り上げていく感じですね。あまり「この役だから、こうしよう:みたいなのが、そこまですごくハッキリとあるわけではなくて。段々と自然に。いつも決めつけたりはしないです。

――良い人悪い人ではなく、カラーがグレーな感じを選んでいる印象を受けているのですが、意識はありますか? もしそうであれば、女優として「変えていかなきゃ!」と思う切っ掛けがあったのですか?
麻生:昔はやっぱり、良い人なら良い人という役を頂くことの方が多くて。年齢的にも、多分タイミング的にもそうでない役を頂けるようになったというのがまずあって。ちょうど今というか、ちょっと前になりますけど、そういう役に挑戦したかったんですよね。そこで、さっきおっしゃられたみたいな“グレーな感じ”というのを表現できたら面白いだろうなと思っていた部分は確かにありました。「純喫茶磯辺」と「たみおのしあわせ」は、タイミング的にちょうど連続して公開したんですけど、そういう一筋縄ではいかないようなキャラクターにものすごく惹かれたんですよ。なので、役で表現する時に、今までとは違う感じの二つの役ができたら、ちょっとしたステップアップにつながればいいなとか、印象が変わったら嬉しいなと考えて。でも、そういう役ばかりをやっていても、それはそれでダメなんだろうなとも思っているので(笑)。

――麻生さんが出演作を選ばれる基準は、監督、役柄、脚本、共演者など色々とあると思いますが、何を重視されていますか?
麻生:今おっしゃられた全部です。でも全部が揃ってなきゃという意味ではなくて、どれか一つでも。何か予感がするんですよね。何となく、きっと自分が出演するだろうというものに対しては「あ!これだ」ってどこかで思うんですよね。それは多分、今言った監督、共演者、脚本、役とかになるんですけど、一言でいうと“勘”になってしまうんです。

――麻生さんは、今後どのような作品で、どのような役を演じたいですか?
麻生:とりあえず、グレーじゃない役をやりたいなと(笑)。本当にそれは思っていて。あまりにそういう役ばかりやっていると「またか!」と言われてしまうので。でも自分の中では、一人一人全然違うとは思ってはいるんですけど、引きで見るとそうじゃない。白か黒でやりたいなというのもあって。「どんな映画?」と言われると、ちょっとわからないですが、何かいい出会いがあればいいなと思います。

――麻生さんは、自分が母親になった時に、どんな母親になりたいと思いますか?
麻生:理想は、私の母親なんですけど。ちょっとね、おかしいというか、変わってるんですよ(笑)。ものすごく明るいんですけど、自分が育ててもらって一番印象に残っているのは、よく歌を作るんですね。作っている意識も無いと思うんですけど、その場その場の歌を歌っていくんですよ。それがすごく記憶に残っていて、良かったんです(笑)。それで、自分も気付いたらそういう歌を作って歌ってるんですよ!だから「やっぱり親子なんだな」と思って。そういう明るさにすごく助けてもらった所があって、私は母親ほど明るくはないのは分かっているんですけど、その感じが子供からしたら良かったから、とにかく明るい母親ではいたいなと思いますね。大ざっぱでいいので、明るくいられればいいなと。

「コドモのコドモ」ストーリー

春菜はイマドキの小学5年生の女の子。ある日、いじめられっこで幼なじみのヒロユ
キと興味本位でしたのは“くっつけっこ”という遊び。そして、性教育の授業を受け
「私、妊娠したかも!?」と思い始めます。大人たちに知られないままに、どんどん
大きくなっていくお腹を抱え、春菜と友人たちは団結し、コドモたちだけで乗り越え
ることを決意するが……。

同級生の妊娠、出産という出来事に、学級崩壊寸前のクラスのコドモたちが、団結し、
命の尊さを学び、ぶつかりながらも助け合い、小さな命をコドモたちの手で守り抜く
感動の成長物語。

監督: 萩生田宏治 「神童」
出演:甘利はるな、麻生久美子、宮崎美子、谷村美月、草村礼子、塩見三省 他
公式サイト: http://kodomonokodomo.jp/
9月27日(土)渋谷シネ・アミューズ 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー



http://news.livedoor.com/article/detail/3833439/
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