女優 麻生 久美子 - L-Cruise - 日経トレンディネット

2008.01.17 日経トレンディネット


今村昌平監督が愛した才能

今村昌平監督『カンゾー先生』のヒロインに大抜擢されたことで、女優としての才能を本格的に開花させた麻生久美子。以後、『ひまわり』(行定勲監督)『回路』(黒澤清監督)『THE 有頂天ホテル』(三谷幸喜)など、個性的な監督たちの秀作に次々と出演し、さらなる成長を続けている。

そんな彼女の初の海外作品となるのが、1月19日から公開となる『ハーフェズ ペルシャの詩』。ナント三大陸映画祭グランプリを受賞するなど各国の映画祭で様々な賞を受賞し、世界にその名をとどろかすイランの巨匠、アボルファズル・ジャリリ監督の作品だ。

「最初に出演のお話をいただいたのは7、8年前。3年前に具体的なオファーをいただき、撮影は2年前に行いました。出演しようと思った一番の理由は、ジャリリ監督の作品だから!」

監督が来日するたびに会い、交流を深めていった麻生。静けさに満ちた繊細で芸術性の高い作品とはうらはらに、ジャリリ監督は茶目っ気たっぷりの楽しい人物だそうで、監督の人柄にまず惹かれたのだという。

だが、初めての海外作品ということもあり、「撮影に入る前は、とても恐くなった」とも。

「監督はいつも素人の方ばかり使っているので、私のように女優を職業としている人間を使うことに途中で嫌気がさしてしまうのではないかと。だから今回は、今までやってきたことを忘れて空っぽになり、ただその場にいるということだけを目標にして撮影にのぞみました」


撮影が始まったら「もうナニジンでもいいや」って
『ハーフェズ〜』は、麻生が扮する無垢な女性・ナバートと、詩人・ハーフェズとの恋を詩情豊かに描いた、イラン版「ロミオとジュリエット」ともいうべき作品だ。誰もが、ナバートは日系人かハーフの女性だと思うだろうが、なんと「日本人」の要素はみじんもない。

「最初はイラン人ということで聞いていたので、どういう気持ちで演じたらいいのか、とても悩みました。文化も習慣も知らないことが多すぎるし、どうしようと思っていたんですけど、撮影直前に監督が『イラン人とチベット人のハーフということにしよう』って。チベットの方々って、私たちと顔立ちが似ているじゃないですか。だったらルックス的にはとりあえずクリアだと(笑)。しかもチベットから来たばかりという設定なら、言葉があまりしゃべれなかったりいろんなことを知らなくても大丈夫かなって」

役作りのためのチベット行きも自ら提案してみたそうだが、監督は「必要ない」とあっさり却下。だが監督は彼女のことを「イラン人だった」とほめてくれたという。

「のんびりとした現場だったこともあり、撮影が始まったら『もうナニジンでもいいや。人間だったらいいや』って、そんな気分でした(笑)」


映画の仕事を続けるということ
リラックスしたスタッフたちの様子、セリフを覚えすぎて注意されたりと、日本とはかなり違う撮影現場のことを楽しそうに話してくれる麻生。映画女優という仕事を愛していることが、話の端々から伝わってくる。そんな彼女にとって“映画の魅力”とは何なのだろうか?

「最初に今村監督の『カンゾー先生』に出させていただいたことがすごく大きいですね。あの作品から『私は映画でやっていきたい』と思うようになったので」

当時、今村監督は彼女に「映画の仕事を続けて欲しい」と言っていたそうだが、映画出演の経験があまりなかったということもあり、正直なところその言葉にピンとこなかったという。

「その後、辛くて悩んだ時期もたくさんあり、映画に出続ける意味が分からなくなったこともあったのですが、演技が好きだということだけは変わりませんでした。そんなときに監督の言葉を思い返し、監督が映画の道に導いてくれたのかな、と……」

監督の願い通り、今も映画の仕事を続けている麻生。国境を越えて活躍しはじめた彼女の、さらなる飛躍が楽しみだ。


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