新鋭・吉田恵輔監督による脱力系コメディ「純喫茶磯辺」で
看板娘役の仲里依紗が、麻生久美子を泣かせちゃった!?

「女子高生とオジサンが、ひとつの
フレームに入ってるのが好きなんです」
(吉田恵輔監督)

 最近、とてもいい喫茶店を見つけた。マスターはただのメタボ中年だが、ウエイトレスのおねーさんが超セクシー。マスターの娘らしい(でも、マスターに似てない)、よく手伝いにくる女子高生もすっごくキュート。そして、何よりも気の抜けたほわわ~んとした空気が充満しており、妙に居心地がいいのだ。あまり他の人に教えたくないのだが、店名は「磯辺」という。7月5日(土)より公開される映画「純喫茶磯辺」の中に出てくるお店だ。

 長編2作目にして、すでに自分のスタイルを持つ吉田恵輔監督の「純喫茶磯辺」は、その名の通り喫茶店を舞台にしたコメディ。バツイチの磯辺裕次郎(宮迫博之)は女性にもてたいスケベ心から、父親の遺産を元手に未経験の喫茶店経営を始める。店内には何故かミラーボールが吊るされ、テレビ・ゲームが置かれ、工藤静香のポスター(1988年のヒット曲『MUGO・ん…色っぽい』)が貼られ、およそ今どきのカフェとは思えない内装だ。しかも、裕次郎はアルバイトの素子(麻生久美子)に対して、下心まるだし。ひとり娘・咲子(仲里依紗)から見れば、純喫茶ではなく不純喫茶もいいとこ。でも夏休みでやることがなく、咲子はいやいやながら店の手伝いをするはめに。ありそうで、なさそうな奇妙な夏が、「磯辺」のオープンとともに始まる。

 6月10日、完成披露の舞台挨拶を終えた吉田監督と咲子役を演じた仲に、合同取材という形で接する機会があった。限られた時間だったが、吉田監督の才気ぶりと人気女優の階段を駆け昇る仲のフレッシュな魅力が感じられるコメントを紹介したい。

 純喫茶「磯辺」、とても個性的なお店ですね。ユニークな内装は、吉田監督のイメージが反映されたもの?
吉田「いやー、あんな喫茶店はありえませんよ(笑)。ボクのイメージする喫茶店と真逆ですね。まぁ、お酒を出さない喫茶店は、カテゴリー的に“純喫茶”になるんですけどね。でも、自分が喫茶店を経営するなら、こういう店にはしないぞ、という要素を詰め込んでいったら、あぁなったわけです。工藤静香さんのポスターをはじめ、ボクの好きな物をいろいろ飾っているんですが、お店に自分の好きな物ばかりを並べればいいってもんじゃないことは分かってます(笑)。工藤さんのポスターは、ボク的にはモナリザの絵を飾っている感覚なんですけどね」
仲「長崎(彼女の出身地)にも、あんな喫茶店はなかったです(笑)。でもお店の中って、意外と居心地がよかったんですよ。漫画本もいろいろあったし、カラオケもあったし。セレクトはすごくダサいんですけど、ダサい=アットホームな雰囲気、なんです。撮影の合間に、『浦安鉄筋家族』とか読んでました(笑)」

 吉田監督作品は「なま夏」(2005)、「机のなかみ」(2006)と男のエッチ目線とピュアな女子高生の目線が絡み合うスタイルが特徴的。今回も意識しました?
吉田「単純に女子高生とオジサンが同じカメラ・フレームに入っていると落ち着くというか、個人的に好きなんです(笑)。それを基準に考えているところがありますね。今回は、それが女子高生と父親になっただけ。でも、このくらいで止めとかないと危ない人だと思われそうなんで、次の作品くらいから新しいスタイルに移行しようかなと思います」

 今春、高校を卒業したばかりの仲さんは、ダメ親父を持った女子高生役を演じてどうでした?
仲「高校時代は長崎の両親と離れて、東京でひとり暮らしだったんで、中学時代を思い出しながら、演じていました。『お父さん、ウザいよ』とか、親と一緒に暮らしていたら、咲子みたいなこと言ったりしたのかなぁとか、いろいろ考えちゃいました。でも、うちの父親は宮迫さんの演じた裕次郎みたいなダメ親父じゃなくて、すごくできる父親なんですよ」
吉田「里依紗ちゃんのお父さんの写真を見せてもらったけど、かっこいいよね」
仲「はい、スティーブン・セガールに似てるんです(笑)」

 昨年の9月の3週間を「磯辺」のロケ・セットで過ごした吉田監督と仲の2人、とっても打ち解けてる様子。これも“純喫茶”効果なのか。後半は仲のどっきり発言もあるので、要チェック!

「麻生久美子さんの着たミニスカ衣装、
私も着たかった。続編、お願いします!」
(仲里依紗)

 撮影現場での和んだ雰囲気が甦ってきた吉田恵輔監督&仲里依紗の、年の差を感じさせない仲良しトーク。吉田監督が作品のテーマ、仲が作品の感想を語った。
吉田「あらためて言うほどのテーマはないんですけどね(笑)。ボクも30歳過ぎなんですけど、まだ青春を謳歌したいなぁと思ってる部分があるんです。子供の頃って、大人になったらもっとしっかりしていると思っていたのに、実際に自分が大人になってみると子供の頃とあんまり変わっていない。まだまだ青春するぞ、無謀なことやってみたいと考える自分がいるんです。そんな父親になりたいなぁという気持ちから生まれた企画ですね」
仲「できあがった作品を観て、ドキュメンタリーを観ているような気分になりましたね。吉田監督は、滑舌がいいのは好きじゃないんです。というか、滑舌がよくなくてもOKなんです。ふつうに話すときも、もごもごしたり、噛んだりするわけですよね。そういう部分をリアルに見せている感じなんです」

 滑舌がよくなくてもOKということですが、台詞をトチってもリテイクしないってことですか?
吉田「滑舌が悪いのがOKというわけではなく、滑舌が悪くてもリアルならOKということですね。リアルに見えて、それでお芝居として成立していればOKなんです。人間、そんなに完璧に言葉を選んでしゃべれるわけじゃありませんから。曖昧なほうがボクは好きなんです。ボクの脚本には『滑舌悪くしゃべる』とか『ドモる』とか、けっこー書いているんです。わざとドモるのとか、逆にとても技術がいると思いますよ」

 次は、お互いの印象を語る2人。仲のおおらかな性格が楽しめる部分なので、とくとお読みあれ。
吉田「里依紗ちゃんは、すごく動物的というか元の素材が面白いので、変に煮込んだりしないで、塩をふる程度にして、そのまま素材を堪能してもらおうと考えました。味付けしないほうが、より美味しくいただける女優ではないかと思いますね」
仲「ふふふ、吉田監督って面白いんです。映画監督は怖い人ってイメージが一般的にあるけど、吉田監督はすっごいしゃべってくれて、『あぁ、監督らしくない人だなぁ』と思いました。ムッツリ変態じゃなくて、ストレート変態なんです。私も親しみやすくて、よかったです(笑)」

 今、アイドル女優らしからぬ、すごい発言が飛び出しましたけど。
仲「ムッツリ変態って、嫌じゃないですか?」
吉田「そうだよね~」
仲「はい。だから、そういう面では、すごくよかったです!」

  トークが乗ってきたところで、素子(麻生久美子)が着るミニスカ制服について聞いてみた。
仲「すごく可愛いですよね。咲子は否定してたけど、私は着てみたかった(笑)。監督には、ぜひ『純喫茶磯辺2』をつくって欲しいです」
吉田「ボクが最初にサイトで見つけた衣装は、米国人向けのもっときわどいものだったんです。でき上がった衣装を見たら、可愛いくて、『これならマックにも行けるじゃん』と思いましたね」
仲「え~! さすがにマックは無理です。ひとりでは行けないですよ(笑)」

 おっと、もう時間か。では最後の質問。物語の後半にある、素子への求婚を考えている裕次郎、再婚を匂わせる父親の言動に心が揺れ動く咲子、そして何も考えていない素子…、居酒屋で3人の思惑と会話がまったく噛み合ないシーンは、長回しによる緊張感みなぎる名場面だ。どういう心境で、この場面に挑んだのだろう?
吉田「あの居酒屋のシーンを、この映画のメインのつもりで脚本を書いていったんです。あのシーンに向かって、どう組み立てていくかをずっと考えていました。撮影現場では里依紗ちゃんの演技がすごい迫力で、麻生さん本当にびっくりして泣いちゃったんだよね」
仲「そうなんです。麻生さんにヒドいことしちゃいました(笑)。でも撮影中、宮迫さんのお芝居に合わせていると自然と咲子になれたんです。あのシーンも、宮迫さんと一緒だったんで、ふつうに演じることができたんです」

 天真爛漫キャラの仲だが、自然に演じて麻生久美子を泣かせちゃうとは凄いし、その演技力を気負わせずに引き出した吉田監督の演出も賞賛ものだろう。
  この夏、サイコーに居心地のよい喫茶店「磯辺」に行ってみたい方は、ぜひ劇場に足を運んでほしい。妙なユルさと言葉にしにくい微妙な感情が交差する独特なムードは、癖になっちゃう心地よさなのだ。

(取材・文/ライター長野辰次)


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